ねじの常識、非常識(第7回)
Q:石膏ボードに直接、タオル掛けをタッピンねじで留めたがすぐに取れてしまう。
ねじの選び方または、石膏ボードの問題でしょうか?
A:石膏ボードに直接、タッピンねじで物を固定することは推奨しません。
石膏ボード用の特殊なアンカーがあり、これを使うことにより脱落を防止することができます。
まず、石膏ボードの説明をしましょう。石膏ボードまたはプラスターボードは、
石膏を主成分とした素材を板状にして、特殊な板紙で包んだ建築材料です。
安価で丈夫であり、断熱・遮音性に優れ、室内の壁・天井に最も多く
使われている建築材料で、ペイント塗装、クロス張り仕上げの下地材として、
住宅・学校・ビルなどの壁・天井の内装に使われます。
石膏ボードの中には「シックハウス症候群」の原因となっているホルムアルデヒドを
吸収し、分解する機能を持つ物もあります。
ところで、石膏ボード用のねじについては一般社団法人石膏ボード工業会によると、
JIS B112 十字穴付木ねじとJIS B1125 ドリリングタッピンねじが推奨されていて
どちらも、めねじを成形しながら物を固定するものです。
しかし、これは石膏ボードを施工するためのねじであり、石膏ボードの壁に
何かを取り付けるためのものではありません。
次に、なぜ脱落してしまうのかを説明しましょう。
石膏ボードには結晶水が約21%相当含まれており、これが耐火性に大きく
寄与しています。しかしながら、簡単にいえば、水分を含んだ物を板紙で包んだだけの
物であるため、逆にもろい物でもあります。
そのため、十字穴付木ねじやドリリングタッピンねじを使うと石膏ボードの組織を
破壊しボロボロになってしまい、保持力が得られないためねじが抜けて留めた物が
取れてしまうのです。
これは、石膏ボードに直接ねじで締め付けを行った場合であり、石膏ボードの下地が
木材の場合は木材で摩擦抵抗が得られるため、脱落はしません。
← 問題ある施工事例
最後に、脱落を防止するために次のようなアイテム(アンカー)がありますので
参考にして下さい。
1)石膏ボード用アンカー(樹脂ねじタイプ)
2)ボードアンカー
3)トグルアンカー
使用事例は写真のとおりで、このようなアンカー類を使用することにより石膏ボード
のねじ脱落を防ぐことが容易になります。
従って、石膏ボードにタッピンねじで留めたタオル掛けがすぐに取れてしまったのは、ねじの選び方の問題ではなく、石膏ボードの特性を考えたアンカーを使用しなかったことによるものなのです。
- 石膏ボードの特性を考えたアンカー -
1) アンカー(樹脂ねじタイプ) 施工後
2) ボードアンカー 施工後(裏側)
3) トグルアンカー 施工後(裏側)