会報ねじ

私の趣味は、「飛び込み」

2013年11月09日

株式会社河坂製作所 田坂 智

 

◇ 長女の「初心者飛び込み教室」を見学し、自分もやってみたい。

 私の趣味は「飛込み(diving)」です。飛込みは、弾力性のある飛板(spring board)や、固定台(platform)からプールに入水して、技の美しさを競うスポーツです。水しぶきをあげない入水を「ノー・スプラッシュ」と呼び、高い評価点をもらえます。
 この競技と出会ったのは、今から10年以上前になります。自宅近くにある相模原総合水泳場で「初心者飛込み教室」が開かれ、当時小学生だった私の長女が、これに参加しました。私も少し興味があったので教室を見学しに行ったところ、受講者が楽しそうに練習をしている風景が、目に入ったのです。「面白そうだな。自分もやってみたいな。」と思い、次の回の飛込み教室に申し込んだ事が、飛込みを始めるきっかけとなりました。

2013.12.14.jpg 教室に入って最初に習うのは「棒飛び」です。これは、上体をまっすぐに立てた姿勢でジャンプし、体を一本の棒のようにしてつま先からプールに入ります。地味ですが、大切な基本練習です。次に習うのが「前入水」で、手のひらを頭上で組み、そのまま体を前屈して入水し、プールの底(深さ5m)まで潜ります。逆に、プールを背にして体を倒すのが「後入水」です。背打ちのような状態になるので、前入水より少しだけ勇気が必要です。私はこういった運動が性に合っているのでしょうか、繰り返し練習をしている内に、もっと色々な事を覚えたい、と考えるようになりました。そこで、相模原ダイビングチーム(SDT)というクラブに入って、本格的な指導を受ける事にしました。

 

 ◇ 「痛い!」失敗、乗り越え大会入賞

 SDTの練習は、平均週1回・毎回2時間程度です。飛込みの練習と言うと、10mの固定台から飛ぶ姿を想像する方が多いのですが、飛板での練習が中心です。なぜかと言えば、固定台が自分自身の力だけでジャンプしなければならないのに対し、飛板は板ばねの力で体を持ち上げてくれるため、回転や捻りが容易で、技を習得し易いからです(マット運動よりも、トランポリンの方が空中回転し易いように)。もちろん、固定台からの基礎練習も重要ですが、やはり飛板の練習回数が多くなります。飛板を上手に使いこなせれば、固定台も自然と上達する、という説もあります。2013.12.14-2.jpg

 さて、その飛板での練習ですが、大抵は自分の出来る種目の反復練習です。たまに新しい技や難しい技に挑戦しますが、緊張のあまり失敗する事が多々あります。失敗して背中を水面に打ちつけた時の痛みと言ったら、ハンパじゃありません。背中が真っ赤になり、内出血する事もあります。大失敗をすると、恐怖心からしばらくの間新しい技への挑戦は控えます。こんな事の繰り返しでなかなか上達しないのが実情ですが、種目がそろえば試合に出場出来ます。私も、年間3~4試合ローカルの大会に出場しています。SDTの熱心なコーチ陣と良い仲間に恵まれ、おかげ様で何度か入賞をする事が出来ました。
 

 ◇ 飛込競技の内容を知れば、観戦も楽しめます。

 では、ここで飛込競技について、説明させていただきます。
1)競技種目

 男女とも飛板飛込(高さ1m、3m)と高飛込(高さ5m、7.5m、10m)の2種目で、それらに二人で演技を行なうシンクロナイズドダイビングが加わり、計4種目です。

2)技の種類と型

★技の種類
1群 前飛込 Forward 飛込台から前に向いて、前方に回転する 
2群 後飛込 Back 飛込台から後に向いて、後方に回転する 
3群 前逆飛込 Reverse 飛込台から前に向いて、後方に回転する 
4群 後踏切前飛込 Inward 飛込台から後に向いて、前方に回転する 
5群 捻り飛込 Twist 1群から4群までの種目に捻りを加える 
6群 逆立ち飛込 Armstand 飛込台上で逆立ちをしてから演技を行う(高飛込のみ)
★型
A 伸び型 Straight 腰および膝を曲げず、両足をそろえた型
B えび型 Pike 身体を腰で折り、膝を曲げず両足をそろえた型 
C 抱え型 Tuck 身体を小さく丸め、膝を曲げた型
D 自由型 Free 捻り飛込で、A・B・Cいずれの型を組み合わせても良い

3)演技番号

 飛込みの演技種目は、105B 、5233Dのように数字(捻り技のみ数字4桁で、後は全て3桁の数字)とアルファベットを組み合わせた演技番号で表わします。数字は技の種類、アルファベットは型を意味します。

例えば、105B(前宙返り2回半えび型)は、
1:演技群(1群~4群)
0:途中宙返りの有無(0=無し、1=有り)
5:宙返り数(0=無しを基準に、半回転毎に+1 従って1回は「2」、2回半は「5」)
B:型(A~C)
という意味です。

4)競技方法

 大会の規模によって異なりますが、公式戦では飛板飛込、高飛込とも6種目の演技を行ないます。(各群から1種目ずつ選択。従って、飛板飛込は、いずれかの群を2種目飛ぶ事になります。)ローカルな大会では、3~5種目の演技が多いようです。

5)採点

 全ての演技には、難度に応じて「難易率」が決められています。当然、難しい演技種目ほど難易率が高くなり、例えば、3m飛板で301C(前逆飛抱え型) は1.8、305C(前逆宙返り2回半抱え型)は2.8です。この難易率と、審判の評点(10点満点で、0.5点刻みの採点)を掛け合わせたものが、得点です。例えば、3m飛板の301Cで、仮に5人の審判全員が7.0と採点した場合、その最高と最低を切り捨てますので7.0点×3人=21.0点が、評点。そして難易率1.8ですから、
 21.0点×1.8=37.80点がその種目の得点になります。
他の演技競技と比べて飛込競技の厳しい点は、一瞬の演技にもかかわらず、少しの失敗で大きく減点されるところです。例えば、機械体操の跳馬で着地を失敗しても、余程の事がなければ、0点にはならないと思います。ところが、飛込競技で入水を失敗(大きな水しぶきをあげるなど)すれば、ほとんど0点に近い採点です。
2013.12.14-3.jpgあるいは、フィギュア・スケートで事前申告した技以外(たとえば回転不足)の演技をした場合、「その技だけ」30%~60%の減点です。一方、飛込競技でひねりが90°以上不足すれば、演技全体が0点です。また、飛込みに「加点」はありません。私のような愛好者でも、オリンピック選手でも、採点は最高10点で、それに難易率がかけられるだけです。

 

◇ これからの日本の有望種目として応援して行きたい 

 最後になりますが、日本の飛込競技は、選手層の薄さと練習設備の少なさから、なかなか世界の頂点を極める選手が現われません。しかしながら、オリンピック・世界選手権での器械体操やフィギュア・スケートの活躍を見ても分かる通り、技の美しさを競う競技という点では飛込みも同じですので、日本人の有望種目だと思います。2020年の東京オリンピックでは、是非、表彰台にあがるような選手が出てもらいたいものです。

以上