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13.「ねじの常識・非常識」

ねじの常識、非常識 #2
2014年03月01日    カテゴリ:13.「ねじの常識・非常識」 

ねじの常識非常識.jpg

Q:ねじを締付けたらねじの頭が木に食い込みました。どうしたら良いでしょうか?

A:座金(ワッシャー)を入れるなどして座面面積を大きくしたねじを使用しましょう。

 ねじを使って物を締付けると軸力(締結力)が発生しますが、その軸力の大きさは、ねじの座面で受ける(支える)ことになります。その際に、ねじや締付けられる物の強さ(または、硬さ)によって、陥没などの塑性変形をしてしまうことがあります。
これは、その材料の持っている強さを超える荷重(軸力)がその部分に加わってしまい、耐えられなくなって凹んでしまったためです。そうならないためにも、座金を入れたり、フランジ付き六角ボルトを使用しましょう。(図1参照)

図1.軟らかい物(木)を締付けた例20140301No01.jpg

もう少し詳しく説明をします。(図2参照)

 まず、面圧という言葉があります。これは、

面圧 = 荷重 ÷ 荷重を受ける面積

で定義され、その中でも材料が塑性変形を起こし始める面圧を限界面圧と言います。これは、材料特性の一つで、材料毎に固有の値を持っています。その値をこえると締付け時に陥没するばかりでなく、締付けが完了した後も外からの力が更に加わることによってその陥没が進行すると、軸力低下(ゆるみ)を起してしまいます。
 次に、対策ですが、陥没する方が弱い(軟らかい)のですから強い(硬い)材料にしたり、座金を入れて同じ荷重をより広い面積で受ける(面圧を小さくする)ようにすることが効果的です。また、ねじの頭の形状を六角からフランジ付き六角にしたねじを用いることも荷重を支える面積が増えるので同じ効果が得られます。
 従って、座面面積の比較的小さなねじで木やプラスチックなどの軟らかいものを締付ける場合には、この面圧に十分注意をしてねじを選ぶことをお勧めします。

 図2.陥没の説明図

20140301No02.jpg

 

 参考として、図3にJIS B1180 六角ボルト,JIS B1187 座金組込み六角ボルト,及び  JIS B1189 フランジ付き六角ボルトの頭部形状の例と座面面積(計算値)を示します。

 

図3.JIS B1180 六角ボルト,JIS B1187 座金組込み六角ボルト,及びJIS B1189 フランジ付き六角ボルトの頭部形状の例と座面面積(ボルトM10,穴径がφ11の場合)20140301No03.jpg

 

※参考として、表1に各種材料の限界面圧を示します。

表1.各種材料の限界面圧20140301No04.jpg

木の限界面圧は、約3.4N/mm2

 

(「ねじ締結体設計のポイント」財団法人 日本規格協会 より抜粋)

 

ねじの常識、非常識 #1
2013年03月31日    カテゴリ:13.「ねじの常識・非常識」 

ねじの常識非常識.jpg  

Q:石膏ボードに直接、タオル掛けをタッピンねじで留めたがすぐに取れてしまう。

  ねじの選び方または、石膏ボードの問題でしょうか?

 

A:石膏ボードに直接、タッピンねじで物を固定することは推奨しません。

  石膏ボード用の特殊なアンカーがあり、これを使うことにより脱落を防止することができます。

 

 

 まず、石膏ボードの説明をしましょう。石膏ボードまたはプラスターボードは、石膏を
主成分とした素材を板状にして、特殊な板紙で包んだ建築材料です。
安価で丈夫であり、断熱・遮音性に優れ、室内の壁・天井に最も多く使われている
建築材料で、ペイント塗装、クロス張り仕上げの下地材として、住宅・学校・ビルなどの
壁・天井の内装に使われます。石膏ボードの中には「シックハウス症候群」の原因と
なっているホルムアルデヒドを吸収し、分解する機能を持つ物もあります。

 ところで、石膏ボード用のねじについては一般社団法人石膏ボード工業会によると、
JIS B112 十字穴付木ねじとJIS B1125 ドリリングタッピンねじが推奨されていてどちらも、
めねじを成形しながら物を固定するものです。
しかし、これは石膏ボードを施工するためのねじであり、石膏ボードの壁に何かを取り
付けるためのものではありません。

 次に、なぜ脱落してしまうのかを説明しましょう。石膏ボードには結晶水が約21%相当
含まれており、これが耐火性に大きく寄与しています。しかしながら、簡単にいえば、
水分を含んだ物を板紙で包んだだけの物であるため、逆にもろい物でもあります。
そのため、十字穴付木ねじやドリリングタッピンねじを使うと石膏ボードの組織を破壊し
ボロボロになってしまい、保持力が得られないため、ねじが抜けて留めた物が取れて
しまうのです。

 これは、石膏ボードに直接ねじで締め付けを行った場合であり、石膏ボードの下地が
木材の場合は、木材で摩擦抵抗が得られるため、脱落はしません。

                         問題ある施工事例

H2403ねじの常識.jpg

 最後に、脱落を防止するために次のようなアイテム(アンカー)がありますので
参考にして下さい。

1)石膏ボード用アンカー(樹脂ねじタイプ)

2)ボードアンカー

3)トグルアンカー

 使用事例は写真のとおりで、このようなアンカー類を使用することにより
石膏ボードのねじ脱落を防ぐことが容易になります。

 従って、石膏ボードにタッピンねじで留めたタオル掛けがすぐに取れて
しまったのは、ねじの選び方の問題ではなく、石膏ボードの特性を考えた
アンカーを使用しなかったことによるものなのです。

 

-  石膏ボードの特性を考えたアンカー  -

1) アンカー(樹脂ねじタイプ)                                        施工後

2アンカー(樹脂ねじタイプ).jpg

3アンカー施工後.jpg

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2) ボードアンカー                                         施工後(裏側)

4ボードアンカー.jpg

5ボードアンカー施工後.jpg

 

 

 

 

 

 

 

 

 

3) トグルアンカー                                             施工後(裏側)

6トグルアンカー.jpgのサムネール画像7トグルアンカー施工後.jpg