ねじの常識、非常識 #1
Q:石膏ボードに直接、タオル掛けをタッピンねじで留めたがすぐに取れてしまう。
ねじの選び方または、石膏ボードの問題でしょうか?
A:石膏ボードに直接、タッピンねじで物を固定することは推奨しません。
石膏ボード用の特殊なアンカーがあり、これを使うことにより脱落を防止することができます。
まず、石膏ボードの説明をしましょう。石膏ボードまたはプラスターボードは、石膏を
主成分とした素材を板状にして、特殊な板紙で包んだ建築材料です。
安価で丈夫であり、断熱・遮音性に優れ、室内の壁・天井に最も多く使われている
建築材料で、ペイント塗装、クロス張り仕上げの下地材として、住宅・学校・ビルなどの
壁・天井の内装に使われます。石膏ボードの中には「シックハウス症候群」の原因と
なっているホルムアルデヒドを吸収し、分解する機能を持つ物もあります。
ところで、石膏ボード用のねじについては一般社団法人石膏ボード工業会によると、
JIS B112 十字穴付木ねじとJIS B1125 ドリリングタッピンねじが推奨されていてどちらも、
めねじを成形しながら物を固定するものです。
しかし、これは石膏ボードを施工するためのねじであり、石膏ボードの壁に何かを取り
付けるためのものではありません。
次に、なぜ脱落してしまうのかを説明しましょう。石膏ボードには結晶水が約21%相当
含まれており、これが耐火性に大きく寄与しています。しかしながら、簡単にいえば、
水分を含んだ物を板紙で包んだだけの物であるため、逆にもろい物でもあります。
そのため、十字穴付木ねじやドリリングタッピンねじを使うと石膏ボードの組織を破壊し
ボロボロになってしまい、保持力が得られないため、ねじが抜けて留めた物が取れて
しまうのです。
これは、石膏ボードに直接ねじで締め付けを行った場合であり、石膏ボードの下地が
木材の場合は、木材で摩擦抵抗が得られるため、脱落はしません。
問題ある施工事例
最後に、脱落を防止するために次のようなアイテム(アンカー)がありますので
参考にして下さい。
1)石膏ボード用アンカー(樹脂ねじタイプ)
2)ボードアンカー
3)トグルアンカー
使用事例は写真のとおりで、このようなアンカー類を使用することにより
石膏ボードのねじ脱落を防ぐことが容易になります。
従って、石膏ボードにタッピンねじで留めたタオル掛けがすぐに取れて
しまったのは、ねじの選び方の問題ではなく、石膏ボードの特性を考えた
アンカーを使用しなかったことによるものなのです。
- 石膏ボードの特性を考えたアンカー -
1) アンカー(樹脂ねじタイプ) 施工後
2) ボードアンカー 施工後(裏側)
3) トグルアンカー 施工後(裏側)