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2023年10月6日 ステンレスねじ部会施設見学会・講演会を実施

2023年11月06日

 

2023年10月6日、当協会ステンレスねじ部会において、兵庫県佐用郡の(国研)理化学研究所

大型放射光施設(SPring-8)並びにX線自由電子レーザー施設(SACLA)への施設見学会と同研究所

内で行われた研究「水素脆化を克服するステンレス鋼の研究」についての研究者講演会に参加し

ました。

1.日時:2023年10月6日 (金)
 ①施設見学 13:30~14:45
 ②講演会  14:45~15:30
 ③部会・懇親会 18:00~

2.見学先  (国研)理化学研究所
大型放射光施設(SPring-8)並びにX線自由電子レーザー施設(SACLA)

3.研究者講演 「水素脆化を克服するステンレス鋼の研究」(WEB講演会 併催)
大阪公立大学 教授 森 茂生 先生

4.参加者(見学会) 西川倫史(日本鋲螺㈱ 代表取締役社長)
※順不動・敬称略 池田隆年(池田金属㈱ 専務取締役)
柿澤宏一(興津螺旋㈱ 代表取締役社長)
北井啓之(ケーエム精工㈱代表取締役社長)
五枝繫樹(五枝精工㈱代表取締役社長)
松本典丈(松本ナット工業㈱代表取締役社長)
山口真奈美(一社)日本ねじ工業協会 関西支部 

5.研究者講演 WEB参加者 一社)日本ねじ工業協会 会員企業


見学の様子や講演会の内容については、西川部会長より頂いたご感想を以下にご紹介したいと思

います。


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                                  2023年10月12日
                       
                                  ステンレスねじ部会
                        
                                   日本鋲螺㈱ 西川

               スプリング8見学会について


 スプリング8の存在は以前から知っていたが、何をするための施設であるかは知らなかった。
スプリング8の円形状になっている建物の形状からフランスにあるCERN(陽子加速器)と同様
の施設なのかと思っていが、施設に到着し、初めにスプリング8の紹介ビデオを視聴し、スプ
リング8が陽子加速器ではなく「観測用機器」であることが判った。

スプリング8には1997年に完成したスプリング8と2012年に完成したSACLAと2種類の設備がある。
どちらも電子顕微鏡で見える世界よりさらに「超極小」の世界を観測できる設備である。
みなさんご存じの通り、ミクロの世界を観察するものには「光学顕微鏡」「電子顕微鏡」などが
あるが、モノを観察するためには観察対象物より小さい電磁波(光)を照射する必要がある。

その極小の波長の「光」を発生させるのがスプリング8とSACLAである。偶然かもしれないが、
スプリング(春)とSACLA(桜)と名称が春で統一されていることに命名者のセンスを感じる。

施設の中は1.5kmの円周の中にビームライン(光の取出口)ごとに研究室が配置されている。
円周上にしか移動できない施設のため研究者は移動のため構内を自転車で移動する。最先端の
科学と自転車というアナログな取り合わせに何か不思議な感じを受けた。

実験設備はいろいろな器具を組合わせて使用しているためかねじが大量に使用されていた。
われわれがそのねじに興味を示していると案内の職員の方は「どこにでもあるねじですよ」と
のこと。そのどこにでもあるなんの変哲のないねじが最先端の技術を支えていることに誇りを
感じたが、そのねじの重要性について、やはり一般の人にとっては「あって当たり前」としか
思ってないことに若干の不満を感じた。

見学会後半は大阪公立大学の森教授の講義を受けた。講義の内容はステンレスSUS304が変形す
る過程で結晶構造がγ相からα'相へ転移する途中で違う結晶構造が発生しているのではないか
という仮説を検証した実験報告だった。スプリング8のすごいところは、ステンレスの試料を引
っ張りながら結晶構造の変化が観察できることである。試料を観察用にスライスする必要もなく、
試料の内部で起こっていることをパラパラ漫画の様に撮影し、観察できるのである。

スプリング8の施設の見学だけであったら、日常からかけ離れた研究をしているのだな、という
印象だけになるところだったが、普段、我々が取り扱っている材料を対象にした研究報告を聞く
ことによって、スプリング8を身近に感じるとともに我々にも新しい技術の恩恵を受けることが
できるのではという希望を感じることができた。

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SPring8-3.jpgSPring8-1.jpg