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経済産業省 製造産業局 産業機械課長 年頭所感

2020年01月06日

                           年頭所感

                                           経済産業省製造産業局 産業機械課
                                                      玉井 優子

令和2年の新春を迎え、謹んでお慶び申し上げます。 

日本経済は、アベノミクスの進展により、長期にわたる回復を持続させており、GDPは名目・実質ともに過去最大規模に達しています。また、雇用・所得環境も改善し、景況感の地域間のばらつきも小さくなっているなど、地方経済は厳しいながらも前向きな動きが生まれ始めています。
他方、製造業を取り巻く環境は大きく変化しており、これに対する対応を進め、イノベーションを続けていく必要があります。

まずは、グローバル経済の変化への対応です。米中対立が顕在化し、保護主義的な動きが広がるなど、通商を巡る国際的な動向の中で、先行きの不透明さに対する懸念が広がっております。
 これまで、日本は、TPP11や日EU・EPAを通じて、質の高い通商ルールを構築してまいりました。また、本年から、米国との日米貿易協定及び日米デジタル貿易協定も発効します。これからも自由貿易の旗手として、自由で公正なルールに基づく国際経済体制を主導する役割を果たしていきたいと考えております。

また、デジタル経済への急激な進展への対応が不可欠です。AIやIoTといったデジタル技術の進化により、新たな製品・サービスやビジネスモデルが生まれ、競争領域が広がるなど、企業を取り巻く競争環境は劇的に変化しています。
第4次産業革命時代に、日本が勝ち残り、世界をリードしていくためには、様々な業種や企業、人、機械が、データを介してつながる「Connected Industries」によって、様々な社会課題を解決し、新しい価値を生み出す「Society5.0」を世界に先駆けて実現することが重要な鍵となります。
日本の強みはものづくりの現場にあると言われますが、その生産現場においてもデジタル技術の活用は不可欠です。これまでも、産業ロボットの導入や、工場内の見える化等により、世界最高レベルの生産性を誇っていますが、今後は、工場のみならず、開発設計段階と工場、工場と工場、工場と物流も含めた最適化が、競争領域になると考えております。「Connected Industries」の取組を、引き続き皆様と進めてまいりたいと思います。

さらに、少子高齢化に伴う中長期的な人手不足の問題の解決も必要です。特に製造業の現場では、熟練工など技術を持った人材の不足や、事業の後継者不足の問題が指摘されています。
 デジタル技術の活用に加え、ロボットや新たな機械の導入は、こういった問題を解決する一つの方策です。ロボットそのものの研究開発やロボットフレンドリーなど、環境の構築に取り組むとともに、中小企業向けの導入補助事業も強化していきます。あらゆる現場へのロボット導入などをサポートする人材育成にも取り組んでまいります。
外国人材の活用にも取り組む必要があります。昨年4月に改正入管法が施行され、製造業では、産業機械製造業分野、素形材産業分野、電気・電子情報関連産業分野において、特定技能外国人の受入れが開始されました。本年は海外での試験も開始予定であり、受け入れの拡大に向けた環境整備にも取り組んでまいります。

サプライチェーン全体での競争力強化を図る上では、企業間の取引の適正化も重要な課題です。産業機械業界では、業種別の自主行動計画の策定や、型管理の問題への対応や、働き方改革に伴うしわ寄せ防止などに向けた取組を進めて頂いておりますが、サプライチェーン全体で付加価値を生み出せるよう、引き続き、幅広い業界の方々とともに議論を深めていきたいと考えております。

また、福島の復興は、経済産業省の最重要課題です。経済産業省では、福島県とともに、「福島イノベーション・コースト構想」の中核となる「福島ロボットテストフィールド(RTF)」の整備等に取り組んでいます。いよいよ今春に全面開所予定であり、産学官の関係者の皆さまに広く活用頂きたいと考えております。
さらに本年は、世界中のロボット関係者が一堂に集まる、「ワールドロボットサミット」を8月に福島、10月に愛知で開催致します。ロボットの研究開発及び社会実装を加速するための国際大会です。福島をロボットのイノベーションの中核地とすべく取り組んでまいります。

日本の製造業は、急速に変化し続ける環境の中で、複雑で困難な課題にも多く直面しています。しかし、それらに果敢に取り組みイノベーションを続けることで、安定した成長を続けられると確信しております。引き続き、皆様の現場の生の声をお伺いし、それを政策に活かしていきたいと考えております。

本年が、皆様にとって素晴らしい1年となることを祈念いたしまして、新年の御挨拶とさせていただきます。